巡り愛
眠り続けるあいは目を覚ます気配がない。
念のため、あいには入院してもらうことにした。
救急外来から、病棟へ移っても一向に目を開けないあいに不安が募る。
あいに何が起こっているのだろうか。
生命に別状はないのはわかっていても、今のあいの状態は決していいものではない。
あいをこんな風にしてしまったのは・・・何なんだろう。
僕・・・ってことは大いにあり得る。
あいの眠る病室の入り口から眠ったままのあいを見つめて、僕は大きくなる不安を抱えて病室のドアを閉めた。
「・・・桐生さん」
ドアを閉めた僕の後ろから少し遠慮がちな声がして、振り返るとあいの職場の先輩の中野さんが立っていた。
「水瀬ちゃん、まだ寝たままですか?」
「うん、もうそろそろ目を覚ましてもいい頃なんだけどね」
心配そうに訊ねてくる中野さんに僕は小さく笑って答えた。
「中野さん」
「何ですか?」
「あいが倒れた時のことを少し訊きたいんだけど、いいかな?」
まっすぐに目を見てそう言う僕に中野さんも神妙な顔をして、小さく頷いてくれた。
中野さんと僕は病室から少し離れたお見舞いの人達が使う談話スペースに移動した。