巡り愛
「目が覚めて・・・本当によかった」
抱き締めたまま、私の肩に顔を埋めている圭さんの呟いた声が震えていた。
私はその言葉の意味も圭さんの震える声の意味もうまく理解できなくて。
「え?」
驚いて、小さく訊き返した。
「・・・覚えていない?あい、仕事中に倒れて運ばれてきたんだよ」
抱き締めていた腕を少し緩めて、圭さんが私の顔を覗き込むように見つめる。
その瞳はとても真剣で、やっぱりとても心配そうで。
私は未だにボーっとしている頭をなんとか回転させて、記憶を辿った。
・・・そう言えば、仕事中、すごく雨の音が気になって。
なぜかドキドキと変な動悸がして。
苦しくなって・・・・・
そこからのことは思い出せない。
圭さんが言うように、その後、倒れてしまったんだろうか。
だとしたら、職場に迷惑かけたかも。
なんて、変な心配が頭をよぎったけれど、それよりも・・・
腕の力は緩まったけれど、変わらず私を抱き締めたままの圭さんに私は俯かせていた視線を移した。
圭さんはきっと、倒れた私をすごく心配してくれていたんだろうな。
自惚れかもしれないけど、さっき私が目覚めた時の圭さんの反応や今、私を見つめている圭さんの瞳は、それを事実だと私に伝えてくれている。