巡り愛
「圭さんが私のことを想ってくれる気持ちはすごく嬉しい。でもね、私は“あの頃”のままの私じゃないよ。圭さんのことを想う気持ちは変わらないし、もっと大きいって言えるくらいだけど。今の私は病気のせいで何もできなかった私じゃない。不整脈も上手に付き合っていけば怖い病気じゃないんでしょ?」
「あい・・・」
私の口調がいつもよりはっきりとしたものだからか、その内容になのか。
圭さんは驚いたように息を呑んで、抱き締めていた腕を少し緩めて私の顔をじっと見た。
そんな圭さんを私も真面目な顔で見つめ返して、さらに言葉を続けた。
「・・・私、死んだりしない。圭さんのそばからもう二度と離れたりしない。だから・・・」
私の言葉はもう一度抱き締められた圭さんの胸の中に消える。
ギュッと痛いくらいに強く抱き締められる腕の中で気付いた。
私を抱き締める圭さんの肩が小さく震えていた。
「あいはこんなに強い人だったんだね。僕が不安に思う必要のないくらいに」
しばらく無言で抱き締め合っていた後。
圭さんの肩の震えが治まったころ、圭さんがゆっくりと腕の力を緩めて私の顔を覗きながら優しく笑いながら言った。
少し赤くなっている瞳は、もう涙で濡れてはいなかった。
「そんなことないよ。私は弱いもの。でもそんな私がもし強くいられるとすれば、それは隣に圭さんがいてくれるから。圭さんと一緒だと思えるからだよ」
「あい・・・ありがとう。もう離さないから、ずっと一緒にいようね」
「・・・はい」
少し切なそうに、でもとても嬉しそうに笑った圭さんの言葉に私も小さく頷いて、溢れる気持ちを込めて笑顔を浮かべた。
私は絶対に圭さんの前から消えたりしないから。
死が2人を分かった“あの頃”のように。
絶対に。
あなたを置いて、消えたりしない。