巡り愛
今、確かに聞こえたその短い会話に私は固まってしまった。
『おかえり』?
『ただいま』??
そう聞こえた気がしたけど・・・どういうこと?
しかも、圭さん『母さん』って言わなかった??
私は間抜けな顔で圭さんと目の前までやってきた女性を見比べていた。
間近で見る女性は思った通りとても綺麗な人で、着物を上品に着こなしている。
どことなく顔立ちが圭さんと似ている気がする。
「急に連絡してきたと思ったら、女の子を連れてくるんなんて。どういう風の吹き回し?あなたが女の子をここへ連れてくるなんて、初めてのことじゃない?」
女性は目の前の私にはお構いなしに、少し早口で話し出した。
その口調が上品な見た目と少し違っていて、ハキハキとしているのに驚いた。
「・・・母さん、いきなりそういう言い方やめてくれない。あいがびっくりしてる」
「え、えぇ!?」
圭さんがうんざりとした口調で言った言葉に、私は思わず声を上げてしまった。
やっぱり目の前のこの綺麗は女性は圭さんのお母さんなんだ!
急に声を上げた私に視線を向けた女性・・・圭さんのお母さんは驚く私ににっこりと優しく笑いかけてくれた。
その笑顔が圭さんのものと似ていて、私はなぜか顔が赤くなるのを感じた。
「可愛いお嬢さんね。圭が女の子と一緒に帰ってくるって言うから嬉しくて。今までそんなこと一度もなかったでしょ?ほら、圭。ちゃんと紹介してちょうだいよ!」
圭さんが今まで誰も女の人を連れてきたことがないというお母さんの言葉が、とても嬉しいなんて。
混乱した頭の中でも喜んでしまう私はやっぱり重症だろうか。