巡り愛
「母さん似だとはよく言われるけど、父さんと僕って似てる?」
不思議そうに首を傾げる圭さんに私は笑顔で頷いた。
「雰囲気がそっくりだよ」
「「雰囲気・・・ねぇ」」
声を合わせて呟く2人が可愛らしい、なんて失礼かな?
「あら、なぁに?ずいぶん和やかじゃない」
ちょうどそこへ開いていた障子の影からお母さんが顔を覗かせた。
「・・・母さんまで。今、一番忙しい時間なのに、こんなところで油売ってる暇ないんじゃないの?」
圭さんが呆れた様子で声をかけるけれど、お母さんはまったく気にしない素振りでお父さんの隣に座った。
「ちょっとくらいなら平気よ。あなた、あいちゃん、とっても可愛らしいでしょ?」
「ああ、圭には勿体ないな」
お母さんとお父さんの会話に私は顔に熱が集まって、真っ赤になるのがわかる。
可愛らしいとか、圭さんにはもったいないとか。
耳を疑ってしまうほどの褒め言葉を頂いたような気分で、恥ずかしくてあたふたしてしまう。
でも、圭さんのご両親にそんな風に思ってもらえて。
それがお世辞でも、すごく嬉しかった。
「あのね・・・確かにあいはすごく可愛いけど、僕には勿体ないとか、親が言うセリフかよ?」
普段の圭さんよりもちょっぴり言葉遣いが乱暴なのは、お父さん達の会話の内容に怒ったのか。
それとも家族に対してだからなのか。
どっちにしても新鮮で、そういう圭さんもかっこいいと思うんだから、私の重症度もかなりなものだ。
「あら、本当のことでしょ?こんな可愛らしい子を大切にしないと、ママ許さないわよ?」
上品に着物を着こなして、凛とした綺麗さのあるお母さんが『ママ』と自分のことを呼ぶのがなんだか可愛らしくて。
でもお母さんの言ってくれた言葉は、心がじんっとするほど、嬉しいものだった。
「言われなくても何よりも大切にしてるから」
ご両親の前なのに戸惑うことなく、はっきりと言ってくれた圭さんの返答が私をもっともっと、幸せな気持ちにしてくれた。
嬉しくて、幸せで・・・涙が零れそうになった。