巡り愛
「今日は色々あったし、ゆっくり眠ろう」
そう言って圭さんは枕元の小さな明かりだけ点けたまま、部屋の明かりを消した。
そっと私を抱き寄せて、キスさえせずに横になろうとする圭さんに私はギュッと抱きついて圭さんの背中に腕を回した。
「圭さん、私・・・今圭さんに抱かれたい!」
「・・・・・えぇ?」
びっくりしたように固まる圭さんの声を聴いて、私はカッと体中の熱が上がった。
勢いに任せて言ってしまったけれど、ダイレクト過ぎる言葉に恥ずかしさがこみ上げる。
もっと言い方があるだろうに・・・
でも心の中にある前世の私の切実なまでの想いと重なって、私はそれさえも深く気にする余裕がなかった。
ただ、切なそうに微笑む圭さんにこれ以上、我慢なんてさせたくない。
何よりも、私が今、そうなることを望んでいた。
前世の記憶に流されているのではなくて、今、私自身がそれを望んでいるんだ。
「で、でもあいは昨日倒れたばかりだし。今日だって疲れただろう・・・それに僕達にはこれからいっぱい時間はあるんだから・・・」
「例えこれからたくさん時間があったとしても、今・・・私は今、圭さんと結ばれたい。体のことは大丈夫。圭さんが私から不安を取り除いてくれたから、嘘みたいに平気になってるから」
「あい・・・でも・・・・・」
私の体調を気遣ってくれてることは、私にも十分にわかっていた。
でも私はその圭さんの優しさに甘えてしまいたくない。
「圭さん、私もう後悔したくないの。圭さんの優しさに甘えて結ばれなかった“あの時”みたいに」
抱きついていた圭さんの胸から顔を上げた私を圭さんは驚いた顔で見下ろしていた。
私の言った“あの時”のことが前世でのことだと圭さんはちゃんと理解してくれていると感じた。
「あい・・・それは・・・・・」
「昨日も言ったけど、私はこの先もずっと、圭さんの前から消えたりしない。でも圭さんの優しさに甘えているのは嫌なの。圭さんも私を望んでくれているなら、今・・・」
その先の言葉は、圭さんのぶつかるような激しいキスに奪われた。