巡り愛


私が覚えているのは、壊れものみたいに、宝物みたいに優しく抱かれたことだけ。


『あい、愛してる』


何度も名前を呼ばれて。
何度も愛を囁かれて。


優しく愛しげに私を見つめる圭さんの瞳は熱くて、私を心ごと溶かした。


愛する人と一つになることがこんなにも幸せで、満たされるんだってことを初めて知った。


優しく甘く抱かれて、圭さんが起こす快楽の波のすべてが愛しくて幸せだった。


幸せ過ぎて壊れてしまいそうなほど・・・



「あい・・・大丈夫?僕、幸せ過ぎて抑えが利かなくなって・・・ごめん」


私は圭さんの腕の中に身を寄せたまま小さく首を振った。


「圭さんはとっても優しかったよ。それに私もすごく幸せ」


「あい」


ぎゅうっと抱き締めてくれる圭さんの胸にすり寄って甘い圭さんの香りに酔いしれる。


しばらくそうしていた私は体も頭も冷めてきた頃、今更ながら自分から圭さんに『抱いてほしい』と迫ったことがすごく恥ずかしくなってきた。


「どうしたの、あい?」


腕の中にいる私の微かな変化にも気付いてくれる圭さんが、私の瞳を覗き込んで訊いた。


心配そうな圭さんの視線も恥ずかしくて直視出来ない。


さっきあんなに強気だった私はすっかり姿を消していた。


「圭さん・・・ごめんなさい」


「どうして謝るの?」


圭さんは驚いたように首を傾げて、眉を寄せた。


「圭さんは私の体調を心配してくれたのに、私ったらあんな風に・・・」


「ああ・・・なんだそんなこと」


圭さんはあからさまにホッとして表情を緩めた。



< 210 / 304 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop