巡り愛


『今から帰るからね』


圭さんから電話が来たのは11時過ぎだった。
昨日圭さんが言っていた通りの時間で、当直明けなのにやっぱり他の仕事もしたんだと思うと、疲れていないか心配なる。


それでも電話越しの圭さんの声がなんだか弾んでいるように聞こえたから、単純な私はそれだけで嬉しくなった。


圭さんが帰ってきたら、お昼を一緒に食べて、ゆっくりしてもらおう。


そう思って、私は用意していたお昼ご飯の仕上げに取り掛かった。



ピンポーン♪


玄関のチャイムの音が鳴る。
これはエントランスからのもの。


「はい」


『あい、僕だよ』


「うん、今開けるから」


『ありがとう』


インターンホーン越しの声もやっぱり機嫌がよさそうで。
圭さんが本当に病院からまっすぐここに帰って来てくれたことがとても嬉しくて。
エントランスのドアを開けるボタンを押しながら、笑顔になっている自分に少し照れた。


それから数分して、今度は部屋の玄関のチャイムが鳴る。


ドアの前で待っていた私は、すぐに玄関のドアを開けた。


「ただいま、あい」


玄関のドアをすり抜けるようにスッと入ってきた圭さんは、そのまま私を抱き締めて、耳元で嬉しそうな声でそう言った。


圭さんの『ただいま』は想像していたよりもずっと幸せな言葉だった。


「おかえりなさい」


圭さんの腕の中にぴったりと身を寄せて、私は溢れてくる幸せと嬉しさを隠せない声で答えた。


「うわぁ、なんだかすごく幸せな響きだね。あいから『おかえりなさい』って言われるのって」


圭さんは珍しいくらいはしゃいだ様子で、言葉通り嬉しそうにそう言うと、チュッと音を立てて私の頬にキスをした。



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