巡り愛
「ありがとう!」
今まで真剣な固い表情を見せていた彼が私の返事に、ぱっと華が咲いたような笑顔を見せて、私の手を握った。
(―――――っ)
私はその突然の彼の笑顔にドキンっと大きく鼓動が跳ねる。
鮮やかな華が咲いたようなその笑顔はとても綺麗で、きっと誰をも魅了する。
しかもぎゅっと握られた手がしなやかだけど、大きくて少しゴツゴツしている男の人の手で。
私の鼓動も体温も一気に上昇させるのには十分すぎる。
「あ、あの・・・」
嬉しそうな笑顔で強く私の手を握る彼に嫌な気持ちは全くしない。
それもかなり不思議ではあるけれど。
ドキドキと高まる鼓動と熱く火照る頬の熱のせいで、よくわからなくなっていた。
ただとても恥ずかしくて、私は小さく声を上げて、握られた手を見つめた。
「あっ、ごめんね」
私の声で初めて気づいたかのように、彼が慌てて握っていた手を離す。
離れていく体温がやっぱり寂しい・・・
「い、いえ・・・」
そんな風に心の隅で思う自分に更に恥ずかしくなって、私は赤い顔のまま俯いた。
「それじゃあ、あっちのカフェでお茶でも飲みながら・・・」
彼が駅ビルの方を指さしてそう言った言葉に私は小さく頷いた。