巡り愛


その後、圭さんの車で一緒に大学に向かった。
以前もそうしてくれたように、今回も大学の駐車スペースに車を停めて先に私を送ってくれた。


「帰りもここに迎えに来るからね」


そう言ってくれる圭さんに笑顔で頷いて、私は圭さんの車が道路を挟んだ向かえ側の大学病院に消えるまで見送っていた。


「よし!」


圭さんの車が見えなくなって、私は自分に気合を入れるように小さく呟いて、図書館へ向かって歩き出した。



「おはようございます」


図書館の事務室に入って、そう声を掛けるとすでに出勤していた人達が私を振り返った。
そして口々に『もう大丈夫?』とか『よくなってよかったわね』とか温かい言葉をかけてくれるから、私は本当に有難くて、嬉しくて一人一人にお礼を言って回った。


そのまま課長のデスクの前に向かって、私は深く頭を下げた。


「色々ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


「いや、本当に大したことがなくてよかったですね。病み上がりですし、あまり無理しないように」


笑顔で答えたくれた課長に私はもう一度頭を下げて「はい」と返事をすると、自分の席についた。


ちょうどそこへ出勤してきたばかりの中野さんがやってきて。
私を見つけて、嬉しそうな笑顔を向けてくれた。


「水瀬ちゃん!出勤してきたんだ。本当にもういいの?でも水瀬ちゃんの顔が見れて、すっごく嬉しい!」


キャッキャとはしゃぐようにすごい勢いで私に声を掛けてくれた中野さんに、びっくりしながらもその気遣いや気持ちが嬉しくて、私も笑顔を返してお礼を言った。


「中野さん、あの時は病院まで付き添って頂いたり・・・本当に色々ありがとうございました。もうすっかり元気なので、本当に大丈夫です!」


私の答えに中野さんもホッとしたように納得してくれた。



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