巡り愛
「それで、桐生先生とはどうなの?入院中も退院後も一緒にいたんでしょ?」
急に話題を変えてきた中野さんに、私はドギマギとして視線を泳がせた。
ダイレクト過ぎる中野さんの質問にどう答えていいのかわからない。
だってここは職場だし、今は始業時間ギリギリの時間だし・・・
「ねっ、ちゃんと聞かせてよ!」
「あの、えっと・・・」
「・・・ゴホンッ。中野さん、もう業務を始める時間ですよ」
私が返事に困っていると、課長が中野さんをたしなめるようにデスクから声を掛けた。
慌てて課長に振り返った中野さんは「すいませんっ」と言って、私の隣の自分の席に座った。
その間際、私への耳打ちは忘れなかったけれど。
「お昼休み一緒に行こう!続きはその時ね!!」
私も苦笑いしながらいつも通りの始業準備を始めた。
数日間休んでいた間、私がやるはずだった業務を中野さんを中心とした先輩方が代わりにやってくれていたおかげで、ほとんど滞っていた業務はなかった。
本当にみんなに迷惑をかけてしまったなと反省しつつも、みんなの優しさが嬉しくて私は少しじんっとしながら、午前中の業務をこなしていた。
お昼休み、宣言通りに中野さんと一緒に休憩を取ることになった。
いつもの大学のカフェテリアへ行って、隣に並んで座ると中野さんは早速、待ちきれないとばかりに話を切り出した。
「で、どうなの?桐生先生とは。ちゃんと全部教えてよ!」
私は飲みかけていたお茶を思わず吹き出しそうになるのを何とか我慢して、目の前の中野さんに視線を向けた。
中野さんはじっと私の顔を見ていて、見逃してはくれそうにない。
私は手に持っていたお茶を置いて、観念して話し出した。