巡り愛
「それで入籍はいつ?披露宴は??」
中野さんは目をキラキラさせて話を先に進める。
私はもう一度、苦笑しながら答えた。
「まだ具体的には・・・まずはお互いの両親に報告するのが先ですし」
「そっかぁ。でも桐生先生のご両親は即OKだろうし、水瀬ちゃんのご両親も桐生先生が相手なら問題なしなんじゃない?」
すっかり冷めてしまったお味噌汁を口に含みながら中野さんが言う。
私も残っているおかずを口に運ぶ。
「そうだといいんですけど。うちの方は母がなんだか喜んじゃって。早く連れてこいって煩くて」
「ぷっ。じゃあ、実物に会ったらもっとすごいね。桐生先生、かなりハイレベルだから」
私は「ははは・・・」と乾いた笑いを漏らしながら、最後に残っていたリンゴを口に放り込んだ。
うちのお母さんなら、確かにありうる。
圭さんのあの見た目と、お医者様という職業・・・かなりミーハーなお母さんなら大喜びするはず。
お父さんの方はいつも温和で落ち着いている人だから、そんなことはないだろうけど。
でもきっと、圭さんと話をすれば気に入ってくれると思った。
だって、圭さんは誰が見ても素敵だもの。
・・・なんて、惚れた欲目かな?
心の中でそんなことを思っていると、中野さんが隣で大きな溜息を吐いた。
何だろう?と思って顔を向けると、少し呆れたような冷たい視線を向けられていて。
急なその変化に私は目を瞬かせた。