巡り愛


「・・・・・・・・」



私は彼の言葉を信じられない気持ちで聴いていた。


真摯に紡がれる言葉は『前世の記憶』なんて、とても信じがたい内容だったけれど。
そんなことがあるのかどうかよくわからなかったけれど。


でも・・・嘘だとは思えなかった。


彼の言葉を聴いているうちに、私の心の中でやっぱり“何か”がザワザワとざわめく。
私を見つめる彼の瞳を見つめ返していると、心の中に溢れてくる“何か”が確かに存在していて。



私は混乱した頭で必死にその答えを探し出そうとしていた。



「僕の中にはずっとキミがいたんだよ。キミと過ごした日々は今もここに残っていて、鮮明に思い出せる・・・こんなこと言って、変に思うかもしれないけど・・・僕にとってはすべてが真実だと感じるんだ」


黙ったままの私をじっと見つめて、彼が言葉を重ねる。
その言葉が本当に真剣で真摯で・・・私の中の“何か”が一瞬、はっきりと見えた気がした。



『圭さん…―――』


心の中で私が名前を呼ぶ。


いや・・・、これは私じゃない。
その名前を呼ぶ声は確かに私だけど、でも“今”の私じゃない。



ああ…―――、これが“前世”ってこと?



どう理解すればいいのかわからない感覚が私を襲う。
とても混乱していて、うまく自分の気持ちがコントロールできない。


でも。


今、私の目の前で真摯に私を見つめるこの人は・・・


“圭さん”だ。


私はそれだけは強く確信していた。



< 24 / 304 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop