巡り愛
「・・・ふぅ」
「あれ?もしかして、今度はあいが緊張してる?」
昨日私の実家へ向かう時とは逆に、私が吐き出した溜息に気づいて、圭さんがなぜか嬉しそうに訊いてきた。
「そりゃ・・・って言うか、圭さんどうして嬉しそうなの?」
圭さんとしてはすっかり肩の荷が下りたのか、晴れ晴れとした顔をしているから、逆に緊張している私はちょっと恨めしくなって、言葉に棘が出た。
「ん?だって、昨日はあいにいっぱい嬉しいことを言ってもらったし、昨夜のあいはいつも以上にめちゃくちゃ可愛かったし。機嫌がよくない方がおかしいでしょ?」
「・・・・・・・・」
にこにこと笑って、言葉通りご機嫌な様子で話す圭さんに私は何も答えられずに黙った。
昨日の言葉も夜のことも・・・蒸し返されるとものすごく恥ずかしい。
無言で前を見る私は真っ赤な顔をしているはず。
現に、ハンドルから左手を離して、私の頬を掠める圭さんは「あい、顔熱いね」って嬉しそうに吐息を零して笑っている。
「圭さん、危ないから運転中にハンドルから手を離さないで」
そんな余裕な圭さんが悔しいから、私は頬に伸ばされていた彼の手を取ってハンドルに戻した。
「ふふっ、拗ねるあいも可愛い」
圭さんはハンドルを握り直しながら、ニヤッと口角を上げて目を細めて笑う。
その笑顔があんまり色っぽくて、私は頬の熱がさらに高くなった。
ご機嫌がよくて、余裕な圭さんはタチが悪い・・・
私は新たに心の中にそう記した。