巡り愛
およそ2週間ぶりに訪れた圭さんの実家の旅館はやっぱり立派で。
でも今日は旅館には寄らずに、そこからさらに道を奥に進んだ場所にあった圭さんの実家(自宅)の前で車は停まった。
圭さんの実家はまるでそれが旅館だと言われても納得してしまうくらい立派で。
前回はこちらの方へは来なかった私は、その立派さに唖然として玄関の前で立ち尽くしてしまった。
「あい、どうしたの?」
格子状になっているいかにも和風の豪邸という玄関の扉を横に引きながら、圭さんは私の手を引くように玄関の中へ入った。
圭さんと一緒に入った玄関先で、また固まる私。
だって、私のマンションのリビングよりも広いんじゃないだろうかってくらいの玄関は、落ち着いていて上品だけど、さりげなく置かれているものが豪華で・・・言葉が出ない。
「あいは一度両親に会ってるからそんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
圭さんはそう言ってくれるけど、結婚のお許しをもらいに来たということと、今目の前に広がるお家の豪華さに私は十分気後れしていた。
そんな私達の元に玄関先の音を聞きつけて、パタパタとスリッパの音を立てながら圭さんのお母さんが満面の笑顔で出迎えてくれた。
「あいちゃん、いらっしゃい!」
お母さん・・・いや、お義母さんは圭さんに似た綺麗な笑顔を私に向けてくれて。
私は慌てて、お義母さんに頭を下げた。
「お邪魔します」
それだけ言うのが精いっぱい。