巡り愛


お義母さんに案内されたのは、うちの客間とは比べ物にならないほど立派な応接室で。
純和風なお家には少し違和感のある白を基調とした欧風調の家具が並ぶ部屋だった。


「家の見た目とはかなり不釣り合いな部屋だろ。母さんの趣味なんだ」


びっくりする私に気づいた圭さんが、私に耳打ちするように教えてくれた。


圭さんの声は小さかったけれど、お義母さんにはしっかり聞こえたみたいで、じろっと圭さんを睨み付ける。


「だって旅館の方も家も純和風ばっかりだからこういう洋風な部屋もほしかったのよ!」


そう言って拗ねて口を尖らせる仕草はなんだかとても可愛らしい。
お義母さんに対して失礼かなと思ったけれど、でも本当に可愛かったんだ。
いつもは着物を上品に着こなす大人の女性なのに、こんな一面もあるんだと知ったら、すごく親近感が湧いてきた・・・なんてやっぱり失礼かな。


部屋に合わせてなのかお義母さんは素敵なティーカップで紅茶を出してくれた。
圭さんとお義父さんにはコーヒーだった。
そのお茶を頂きながら圭さんがお義父さん達に結婚について切り出した。


圭さんから結婚を決めたことと昨日、私の両親から承諾をもらった話を聞くとお義父さん達はとても喜んでくれて。


2人で声を合わせて『おめでとう』と言ってくれた。


笑顔でそう言ってくれる2人が心から祝福してくれていることが伝わってきて、私の目には嬉し涙が溢れた。


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