巡り愛
「思い出してくれたの?」
圭さんに確かめるように訊ねられて、私は小さく頷いた。
「でも・・・まだ混乱していてよくわからないの」
私は頷きながら、正直に告白する。
目の前の彼が“圭さん”だということははっきり思い出したけれど。
それ以上のことはまだよくわからない。
不安に思う私に圭さんはさっきよりももっと優しく微笑んでくれた。
「大丈夫だよ。今はまだ思い出せなくても」
そして、私の手をそのほほえみのように優しく包んでくれる。
「だってほら。僕はこうしてキミを見つけたから。キミが僕を受け入れてくれるならもうキミを離さない」
その言葉と一緒に、私の手をぎゅっと強く握ってくれて。
「だからここからゆっくり二人で始めよう?急ぐ必要はない・・・だってこれからずっと一緒にいられるんだから」
重ねてくれる言葉がとても、とても嬉しかった。
「・・・・・はい」
私はまだ涙の溢れる瞳で圭さんを見つめた。
そっと、私の頬に伝う涙を圭さんの指先が優しく拭う。
その指先の感触にドキドキと鼓動が高鳴る。
すごく嬉しくて、すごく幸せで。
私は自然と笑顔が零れた。
圭さんが少しの間黙って、私の手を握ったまま、じっと私を見つめている。
その瞳は私の中の何かに思いを馳せているような気がして。
「・・・圭さん?」
私が小さく声を掛けると、圭さんはにっこりととても綺麗な笑顔を浮かべて、繋いだままの私の指先に触れるだけのキスを落とした。
「あい・・・好きだよ」
「・・・・・・・・」
私は指先へのキスと不意打ちの告白に一気に体温が上がるのがわかった。
真っ赤に染まってるだろう顔で、言葉を失くて彼を見つめる。
圭さんの思いがけない言葉がどうしようもないくらい、嬉しい。
「これからゆっくり二人で始めていこうね」
私の指先にキスをしたまま、優しく真摯に私を見つめる圭さんに私は溢れる想いを込めて、笑顔で頷いた。
「はい・・・・・」