巡り愛
「あい!」
固まっていた私がその声に勢いよく振り返ると、受付の前に圭さんがいて。
瞬時に胸が甘く掴まれたように、キュンとなった。
毎日一緒にいるのに、圭さんを見る瞬間はいつもドキドキする。
でもすぐにいつもの圭さんとどこか雰囲気が違うことに気づいた。
いつもはふわりと優しく笑って私を見てくれるのに、今は見たことがないような真面目な顔をして私の後ろに視線を向けている。
その表情も視線も少し怖いくらいで。
私の後ろに立つ高梨君を睨むようにして、圭さんはゆっくりと私達のところへ近づいてきた。
「圭さん・・・あの・・」
「水瀬さん、この人誰?」
高梨君をじっと見たまま私の前に立った圭さんに恐る恐る声をかけると、その声を遮るように後ろの高梨君がいつになく冷ややかな声で訊ねてきた。
高梨君がそんな声を出すのも珍しくて、私は頭の中を混乱させながら答えるために後ろを振り返った。
「あ、えっと・・・桐生圭さんって言って東都大病院でお医者様をしていて・・・」
「あいの婚約者だけど」
圭さんも高梨君もなぜか睨み合うようにお互いを見ているから、私はあたふたしてしまう。
そんな私の言葉に圭さんが被せるように高梨君を見たまま、はっきりと告げた。