巡り愛
*side圭*
時計の針はそろそろ9時半を回ろうとしている。
今日はあいが遅番の日だから、いつものように職場に残って仕事をしていた僕はあいを迎えに行くために病院を出た。
あいも一緒だからという理由で、最近はもっぱら車通勤になっていた。
今日も車を大学の駐車スペースに停めて、図書館へ向かった。
図書館に着くと、まだあいは中にいるようで外には誰もいない。
いつもなら数分待つだけで出てくるあいが、今日は一向に出てくる気配がなくて。
入口から漏れている明かりで中にいることは間違いないと思うんだけど、何か嫌な胸騒ぎがした。
昼間の高梨って男のことが一瞬、頭を掠めた。
まさか・・・あいに何かあった?
僕は焦る気持ちのまま、図書館へ足を踏み入れた。
入口のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできた光景に体中に血液が沸騰するような怒りがこみ上げた。
―――…あいが高梨に抱き締められていた。
僕の気配に気づいた2人がゆっくりとこちらを向く。
あいはびっくりしたように目を見開いて、慌てて高梨から離れるように腕を伸ばして暴れた。
でも高梨はそんなあいの自由を奪うように彼女に回した腕を強くして、僕を鋭い目で睨み付けた。
僕は怒りにまかせて高梨に殴り掛かりたいのを何とかなけなしの理性で抑え込む。
向けられた以上の強い視線で高梨を睨み付けながら、僕は口を開いた。