巡り愛


「消毒」


そう言って、高梨が触れたという頬にキスをする。


頬に触れるのも、抱き締めるのも。
他の男になんて、もう二度とさせるものかと強く思った。


そうじゃなきゃ、嫉妬でどうにかなってしまいそうだ。



「圭さん、心配かけてごめんなさい」


いつものより長いキスを頬に落とした僕を抱き締め直しながらあいは僕を見上げて小さく謝った。
不安げに眉を下げるあいが可愛くて、僕はあいの目元を撫でるように指先を滑らせた。


「たとえ一瞬でも、他の男に触られたくない。あいのすべては僕のモノだから」


独占欲むき出しの自分勝手な台詞。
あいが引いてしまうかもと思いながらも、言わずにはいられなかった。



僕がどれほどキミを想っているのか、ちゃんとわかって。



そんな自分勝手な僕をあいはとても嬉しそうな笑顔で見つめると、僕の胸に顔を埋めるように抱きついた。


「嬉しい。圭さんが嫉妬してくれるなんて・・・」


「僕ってかなり嫉妬心も独占欲も強いよ・・・気付いたのはごく最近だけど」


「え?」


僕の嫉妬が嬉しかったなんて可愛いことを言うあいに僕は思わず本音を口にしていた。
キョトンと首を傾げて僕を見上げてくるあいに、僕は苦笑いを浮かべた。


「あいと実際に出逢うまでは誰にもそんな気持ちは持ったことがなかったから。でもあいのことは最初から僕だけのモノだって思っていたし、矢野があいのことを可愛いっていうのでさえ、嫌だったからね・・・あいにだけは僕も独占欲の塊になるみたいだね」


どこか他人事のように言ってしまうのは、照れ隠し。
矢野にもびっくりして呆れられるくらい昔の僕からは想像もできないほど、今の僕は独占欲も嫉妬心も人並み以上にあるらしいから。


大概だなって思うけど、譲れないし、我慢のしようもないから仕方ない。



< 282 / 304 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop