巡り愛
診察室を出ると、受付のカウンターの中で看護師さんと笑顔で話す圭さんを見つけた。
矢野先生の言うとおり、本当に待っていてくれたんだと嬉しくなった私だけど、診察室から出てきた私に気付かずに、女性の看護師さんと親しそうに笑顔で会話している圭さんに、一瞬、チクンと胸が痛んだ。
・・・・・仕事仲間と会話しているだけ。
ただそれだけなのに、イチイチ反応してしまう自分が情けない。
どれだけ私って心が狭いんだろう。
そう自分に嫌気がさして、「はぁ・・・」と小さく溜息を吐いた。
「何?あいちゃんもヤキモチ、酷い方?」
私のすぐ後ろにいた矢野先生が私の溜息に気付いて、私の耳元で小さくからかうように訊いた。
「ち、違っ・・・」
「あいちゃんもわかりやすいんだな」
クスクスと笑いながら私を見る矢野先生はすごく楽しそうで。
私は恥ずかしくなって睨むように背の高い先生を見上げた。
「そんな目、桐生以外に見せるとお仕置きされるぞ?」
「へ?」
「その上目遣い、ヤバイって」
私よりもずっと背の高い矢野先生を見上げるのに、目線を上げただけなのに、何がヤバイのかわからない私は矢野先生を睨んでいたのも忘れて、キョトンとした。
そんな私に矢野先生はなぜか苦笑いを浮かべて、もう一度私の耳元に顔を近づけた。
「ヤキモチ妬くのも、その上目遣いも他の男の前でやるなよ。可愛すぎて桐生が嫉妬で狂うぞ」
「――――っ!?」
小声で囁くように落とした矢野先生の言葉に私はボンっと顔を真っ赤にさせた。