巡り愛
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「ごめんね、遅くなっちゃったね」
駅ビルのカフェで時間が経つのも忘れて、話していた私達。
気づけば、外はすでに陽がすっかり落ちて、夜空に星が瞬いていた。
「いいえ・・・とっても楽しかったから、時間のことなんて忘れてました」
カフェを出て、少し申し訳なさそうにしている圭さんに私はにっこりと笑って答えた。
だって、本当に楽しくて、時間が過ぎることなんて気になっていなかった。
圭さんと一緒にいることがただ嬉しくて、もっと一緒にいたい・・・本当は今もそう思っている。
出逢ったばかりの人なのに。
やっぱり“初めて逢った”感覚がしないのは、心の中に彼がずっといた証拠なのだろうか。
「そんな風に言われると嬉しくて放したくなくなるな」
「え?」
艶やかに細めた瞳で私を見つめて、ぽつりと圭さんが呟いて。
指先で私の目元をひと撫でした。
鼓動がドキンと大きな音を立てて跳ねる。
顔もあっという間に真っ赤に染まった。
「可愛い」
うっすらと口角を上げた圭さんの笑顔は吸い込まれそうなほど綺麗で。
私はますます赤く火照る頬の熱にどうしていいのかわからなくなる。
上がったその熱を確かめるように、圭さんは指先を滑らせて私の頬をそっと包み込んだ。
「遅くなったから送っていくよ。電車で帰るんでしょう?」
「え、でも・・・まだそんなに遅くないから・・・送ってもらうなんて申し訳ない・・・」
「僕がもっとキミと一緒にいたいんだ」
暗くなったと言ってもまだ7時過ぎ。
送ってもらうほどの時間じゃないし、圭さんだってお仕事で疲れているのに・・・
と断る私の言葉を遮って、圭さんが私の瞳を見つめたままふわりと笑って言った。