巡り愛



「・・・・・・・」


その笑顔も、その言葉も。
私の心をとても甘く痺れさせる。
私が嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちで、ドキドキしてしまって、すぐに答えを返せないでいると、圭さんが首を傾げながら少し不安そうな顔を見せた。


「ダメ・・・かな?」


そんな表情でそんな風に訊かれたら、どんどん鼓動が高まるばかりで。
もちろん「ダメ」だなんて、言えるわけもなく。
・・・「ダメ」だなんて思うはずもないから、私は真っ赤に染まった顔で小さく首を左右に振った。


「ダメ・・・じゃないです。・・・私も同じ気持ちだから・・・嬉しいです」


恥ずかしくて声は小さくなってしまったけれど、そんな私の呟きもちゃんと聞き逃さずわかってくれた圭さんは、私がもっともっと顔の熱を上げてしまうほどの綺麗な笑みを満面に咲かせた。


「ありがとう・・・やっぱりあいは最高に可愛いな」


「・・・・・・・」


満面の笑みで嬉しそうに見つめられて、『可愛い』なんて言われて。
私はこれ以上ないほど赤くなって、圭さんから顔を隠すように俯いた。
ショート寸前まで跳ね上がった鼓動が圭さんに聞こえてしまいそうで、私は胸元を押さえるように手を握った。


「あい・・・可愛すぎて抱き締めたいんだけど?」


俯いた私の耳元で囁くように言った圭さんの言葉に、私はパッと顔を上げた。
すぐ目の前に圭さんの綺麗な顔があって、私は体中に沸騰するほどの熱が一気に上がる。


「ふふ・・・可愛い」


そう言って、圭さんは片手を私の前に差し出した。
それは、手を繋ごうっていう意味だと鈍い私にもすぐにわかった。


自分が『可愛い』なんて全然思えないけれど。
でも圭さんがそう言ってくれることはとっても嬉しくて。
私はふわふわした気持ちで、照れ笑いを浮かべながら、差し出されたその手に自分の手を重ねた。



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