巡り愛
私の職場はとても静かだ。
図書館という場所だから当然だけど。
事務室以外は基本的に言葉を発しないで仕事をする。
返却された本を元の場所に戻したり、新しく図書に加わった本を並べたり。
それから受付で貸出や返却の処理をするのも私の仕事。
もちろん中野さんや他の司書の先輩達も同じような仕事をしている。
ここでは今年入ったばかりの私が一番後輩だから、必然的に雑用的な仕事も私の担当だった。
人見知り・・・というほどではないけれど、あまり人とワイワイ言ったり賑やかな場所が得意じゃない私には、静かな黙々と仕事ができる司書という仕事はとても合っていた。
昨日の夕方、返却されてまだ戻せていなかった本達をそれぞれの場所に戻し終えた私は、一旦、事務室に戻る。
そして課長や他の先輩達にお茶を煎れて、皆さんの机に置いていく。
お茶を煎れるのもやっぱり一番下っ端である私の担当。
お茶を煎れ終えた私は、自分で立てた午前中の予定を消化すべく、また事務室を出て黙々とそれをこなした。
根暗なのか・・・と自分でも思うけど、この仕事スタイルが気に入っている。
それに元々家族や友達に“本の虫”と言われるくらい本が好きだから、本当にこの仕事は私にぴったりなのだ。
時計が12時を過ぎて、私はお昼休憩に出た。
お昼の休憩はいつもみんなで順番に取る。
本の貸出や返却に来る学生はお昼の時間でももちろん関係なく来るから、必ず誰かがいなければいけないから。
私は大学のカフェテリアでAランチと書かれたセットを食べていた。
カフェテリアは安いし、味も美味しいからランチとしては申し分ない。
学生でごった返しているからなかなか席を確保するのが大変なのと、かなり賑やかなことを除けば、とても気に入っていた。
中野さんが一緒の休憩時間の時は、二人で来ることが多いけれど。
今日は別の時間だから、一人だった。
一人で静かにAランチを食べていると、不意に聞こえてきた声に思わず箸が止まった。
『圭先生ってなんで誰とも付き合わないのかな?』
私の隣に座る二人組の女性のうちの一人が、私と同じAランチのハンバーグを摘まみながら、迎えに座る人に真剣な顔で訊いていた。