巡り愛
『図書館ってそんな遅くまで開いてたんだね。あいは何時まで仕事なの?』
「閉館時間が9時半なので、10時前くらいには上がれると思います」
もしかしたら、明日は時間をずらして電話できるかもしれない・・・
圭さんの言葉に私は淡い期待を抱いてしまう。
でも、次に聞こえたのはもっと嬉しい言葉だった。
『それじゃあ、10時に迎えに行くね』
「え・・・えぇ!?迎えにって・・・えぇ?」
圭さんが当たり前ぽく言った圭さんの言葉に、私は慌ててしまって、普段よりも大きな声を上げて訊き返した。
それに圭さんはやっぱり当然のことだと言わんばかりに、真剣な声で答える。
『そんな遅い時間にあいを一人で帰らせるなんて、できないよ』
「・・・・・・・」
心配してくれる圭さんの気持ちが嬉しくて、私は真っ赤になった顔に手を当てて、言葉に詰まってしまった。
こんな風に心配してもらえることが、こんなに嬉しいことだなんて。
今まで知らなかった気がする。
「でも、お仕事は?」
『大丈夫。明日は当直じゃないしね。今夜みたいに色々やることはあるから、10時までなんてあっという間だよ』
(甘えてしまっていいのかな?)
そう思って聞いていた私に、圭さんは言葉を重ねる。
『だからね、迎えに行く』
私の答えを聞くまでもなく、圭さんは少し強引にそれを決定事項にした。
でも私はそんなあまり見ない圭さんの少しだけ強引なところにもドキドキして、嬉しいと思ってしまう。
いつもは限りなく優しいイメージの圭さんが見せるちょっとした別の一面。
それも私を想ってのことだと思うと嬉しくてたまらない。
・・・・・自惚れかもしれないけれど。
「はい、よろしくお願いします」
『うん、よろしくお願いされるよ』
そんな圭さんの満足げな言葉に、二人して声を合わせて笑った。
こんな何気ないことが、とてもとても幸せだと思った。