巡り愛
そして、翌日。
私は遅番のため、午後からの出勤だった。
いつも通り、静かな空間で仕事をしながら、浮かんでくるのは圭さんのことばかりで。
仕事が終われば、迎えに来てくれる圭さんに会える・・・そう思うと、気持ちが弾む。
でも、早く終わりの時間になってほしいと思うほど、時間が経つのは遅くて。
ウキウキした気持ちと、なかなか過ぎない時間がもどかしい気持ちと。
どちらにしても、ソワソワと落ち着かない気持ちで、私は今日の業務予定をこなしていた。
やっと、時計の針が9時半を差して。
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
バイトの男の子がそう言って、帰って行った。
私はその後ろ姿に「お疲れ様でした」と答えて、急いで閉館の札を正面玄関のドアにかけた。
そして、ささっと帰り支度をして、戸締りを確認する。
最後まで点けていた事務室の電気を消した私は、正面玄関の脇にあるセキュリティーボタンを押した。
一応、防犯のためにセキュリティーを入れて帰るのが最後の仕事。
玄関のドアを出て、鍵をかけると、本日の業務はすべて終了。
ちょうど、ドアのカギをかけたところで、優しいその声が耳に届いた。
「もう終わったの?」
振り返ると、にっこりと笑いかけてくれている圭さんがいて。
暗がりの中、電灯の光に照らされた圭さんの笑顔に鼓動はあっという間に速くなる。
「はい」と返事を返して、私のすぐそばまで歩いてきた圭さんを見上げれば、優しく見つめてくれるその瞳に、さらに鼓動は高鳴るばかり。
「お疲れ様、あい」
そう言って私の髪に手を伸ばして、そっと梳くように撫でてくれる圭さんの指先が、とても優しくて、温かくて。
それだけで幸せで満たされる。