巡り愛
確かに、今まで付き合った人には、そんな風に接してこなかったけど。
夜遅い時間に帰るって言われても、『気を付けて』と声はかけても、わざわざ送ったりしなかった。
『送って行って』と言われれば、仕方なく送って行ったくらいで。


・・・・・確かに、そんな自分が酷い男だと自覚はある。


「変われば変わるもんだな」


矢野が呆れたように、でもどこか嬉しそうに言った言葉に、僕は嫌そうな顔を返した。


仕方がない・・・だって、あいは他の誰とも違うんだから。
僕にとっては彼女だけが、“本物”なんだから。



あいの遅番の日に迎えに行くようになって、それ以外にも毎晩の電話は欠かさないし、休みが合えば、デートみたいに一緒に出掛けることも何度かあった。
そんな風に普通の恋人同士みたいな関係をゆっくり築き上げていた僕達。


出逢ってから、2か月くらいそんな穏やかな日々が続いていた。
    




でも、そんな平穏で幸せな時間が、思いがけない人の訪れで狂わされるなんて・・・・・





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