巡り愛
夜、7時を少し回った頃、僕は1日の仕事を終えて、病院を出た。
朝の出来事のせいで、ちょっと調子が狂ってしまったけれど、あの後は普段通りに勤務ができて、予定していた仕事も片づけられた。
矢野に言われた言葉のおかげかも・・・っていうのは、あいつには絶対言わないでおこう。
色々と調子に乗りそうだ。
そんなことを思いながら、病院の職員用玄関を出た僕は、そこに人待ち顔で立っている人に気づいて、思わず足を止めてしまった。
「圭っ!」
僕を見つけて、壁にもたれるように立っていたその人・・・北野が姿勢を正しながら嬉しそうな笑顔を見せた。
僕はそんな彼女の笑顔につい身構えてしまう。
・・・僕のことを待っていたのか。
この状況では、それを疑う余地もなくて。
僕は溜息を吐き出しながら、近づいてくる北野に表情を硬くした。
「仕事、終わったの?今日はこの後、何か用ある?もし、なかったら・・・」
「用はないけど、北野には付き合えないよ」
僕は北野の言葉を聞き終わる前に、先回りして断りの言葉を口にした。
そんな僕に北野は目を見開いて、眉を寄せる。
「・・・どうして」
「どうしてって、僕が北野と出掛ける必要性がないから」
かなり冷たい言い方だと思う。
でも、北野に変な期待を持たせたくない。
北野のためじゃなくて、あいのために。
今の僕には過去の彼女に気を配る気持ちの余裕はない。
僕の中はあいでいっぱいなんだから。
「久しぶりに会ったんだし、食事に行くくらいいいんじゃない?」
悲しそうな上目づかいで僕を見上げながら、そう言ってくる北野に僕は首を左右に振った。
「僕、今、付き合ってる人がいるから。彼女以外と意味もなく出掛けたくない」
「・・・・・・・え?」
北野が意外そうに顔を顰める。
僕に恋人がいるってことが、信じられないと北野の瞳は揺れていた。
朝の出来事のせいで、ちょっと調子が狂ってしまったけれど、あの後は普段通りに勤務ができて、予定していた仕事も片づけられた。
矢野に言われた言葉のおかげかも・・・っていうのは、あいつには絶対言わないでおこう。
色々と調子に乗りそうだ。
そんなことを思いながら、病院の職員用玄関を出た僕は、そこに人待ち顔で立っている人に気づいて、思わず足を止めてしまった。
「圭っ!」
僕を見つけて、壁にもたれるように立っていたその人・・・北野が姿勢を正しながら嬉しそうな笑顔を見せた。
僕はそんな彼女の笑顔につい身構えてしまう。
・・・僕のことを待っていたのか。
この状況では、それを疑う余地もなくて。
僕は溜息を吐き出しながら、近づいてくる北野に表情を硬くした。
「仕事、終わったの?今日はこの後、何か用ある?もし、なかったら・・・」
「用はないけど、北野には付き合えないよ」
僕は北野の言葉を聞き終わる前に、先回りして断りの言葉を口にした。
そんな僕に北野は目を見開いて、眉を寄せる。
「・・・どうして」
「どうしてって、僕が北野と出掛ける必要性がないから」
かなり冷たい言い方だと思う。
でも、北野に変な期待を持たせたくない。
北野のためじゃなくて、あいのために。
今の僕には過去の彼女に気を配る気持ちの余裕はない。
僕の中はあいでいっぱいなんだから。
「久しぶりに会ったんだし、食事に行くくらいいいんじゃない?」
悲しそうな上目づかいで僕を見上げながら、そう言ってくる北野に僕は首を左右に振った。
「僕、今、付き合ってる人がいるから。彼女以外と意味もなく出掛けたくない」
「・・・・・・・え?」
北野が意外そうに顔を顰める。
僕に恋人がいるってことが、信じられないと北野の瞳は揺れていた。