巡り愛
その後、今日もお互い仕事があることを思い出して、私は慌てて簡単な朝食を準備した。
大したものも作れなくて、申し訳なく思いながら、圭さんの前にオムレツとサラダを並べた。
コーヒーだけはちゃんと煎れたくて、圭さんにはエスプレッソを用意した。
なぜか、圭さんはエスプレッソが好きだと思ったんだ。
「僕がエスプレッソが好きだって、話したっけ?」
圭さんも少し驚いた顔をして、私の差し出したカップを受け取った。
「圭さんってコーヒーもお茶も濃い目が好きですよね?」
「うん、そうだけど・・・話したことはないよね?」
私はそれに頷きながら、ずっと不思議だったことを圭さんに話した。
「私、コーヒーは薄いのか、カフェオレみないなものしか飲めないんですけど。コーヒーメーカーを買う時に、なぜかエスプレッソも煎れられるタイプのものを選んだんです。自分じゃあ、絶対必要ないのに・・・どうしてもエスプレッソが煎れられなきゃいけないって思って・・・・・ずっと不思議だなって思ってたんですけど・・・今はなんとなくどうしてか、わかる気がします」
私は自分で言いながら、照れてしまった。
それはきっと、心の中にいた“私”が『彼は濃い方が好き』って知っていたからだ。
だから無意識に、エスプレッソも煎れることのできるものを選んだんだと・・・今ならわかる。
「あい・・・・・それ、すごく嬉しいよ」
圭さんにも私の言いたいことが伝わったのか、照れたように目元を染めて、言葉通りすごく嬉しそうな顔をして笑った。