蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
「ちょっと、勝手に座るの止しなさいよ。蓮杖さんに叱られるわよ?」

窘める冴子だったが。

「僕と冴子さんが黙ってればバレないよ」

椅子のキャスターを利用してクルクル回りながら俊平が言う。

「そういえばさ…」

彼は椅子に座ったまま、冴子の顔を見た。

「夏休みに入ってから『契約』果たしてないよね、『冴子』…」

「っ!」

突然呼び捨てにする俊平に、冴子の表情が強張る。

…一学期のある放課後、それまで何の接点もなかった俊平と冴子は知り合った。

虐められ、放課後まで掃除用具入れのロッカーに閉じ込められていた俊平に声をかけた生徒会長の冴子。

彼女には誰にも言えない秘密があった。

実は屈服させられたい、従順に言いなりにされたいという願望。

その結果、『契約』を持ち掛けたいと常々考えていた。

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