蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
その頃。

蓮杖探偵事務所に程近い路地裏。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

ローファーの音を立ててひた走る雛罌粟の姿があった。

その表情は焦燥している。

まるで肉食獣に追い詰められる小動物。

制服のブラウスの袖が、スカートの裾が不自然に切られている。

白い太ももには赤い血の筋が伝っていた。

傷自体は深くないようだ。

当然である。

傷をつけた相手は、雛罌粟を嬲って愉しんでいるのだから。

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