蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
這い蹲ったまま、呼吸を荒くしながらサハクィエルは耕介を見上げる。

洞察力、技術、筋力、覚悟。

全てにおいて超一流。

街の私立探偵など、とんでもない。

この男は、混沌の戦場でも滅多にお目にかかれない『殺人者』だ。

平和な日本に住んでいるのが不似合いなほどの、血の匂いのする殺人者。

天性の殺人鬼といっても過言ではない。

後天的な育成によってではなく、生まれ持った先天的な人殺しの素質があったとしか思えない。

そうでなければ、不慮の事故で誤って少女を殺してしまったくらいで、ここまでの『心の闇』を抱えてしまうとは思えない。

「待たせたな」

サハクィエルをねじ伏せたまま、耕介は彼女の細首に片足を添える。

「頚椎を踏み砕いて、お望み通り殺してやる」

闇に堕ちた耕介の瞳が、鈍い輝きを放つ。

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