蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
ともあれ、もうこの場にいる必要はない。

耕介はハンドポケットで現場を後にし、雛罌粟もそれに続く。

いつの間にかこんなに日が暮れている。

心許ない街灯の下、街の夜景が見える坂道をヨタヨタと下っていく耕介。

サハクィエルとの戦闘で受けた傷が痛むのだろうか。

思えば狙撃されたり、爆発に襲われたり、ビルの屋上から飛び降りたり、走行するトラックのコンテナの上で殴り合ったり、今日は大変な一日だった。

そして体の傷は勿論だが、心の傷も…。

「……」

いつものような軽口の一つも叩かず、黙々と歩く耕介の背中を見つめながら、雛罌粟もただただ黙って歩く。

< 243 / 440 >

この作品をシェア

pagetop