蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
その時だった。

事務所に入ろうとした耕介と雛罌粟の背後で、パールホワイトの高級車が停車する。

BMW735i。

運転席側のパワーウィンドゥが開き、中から顔を見せたのは仕立ての良いダークのスーツを着た、黒髪短髪の男。

「飯を食いにいく約束を果たしに来たんだが…今は空いてるか?」

矢沢 省吾。

先日の聖園 冴子誘拐事件以来、一週間ぶりだった。

「……」

耕介はマジマジと省吾の顔を見る。

パールホワイトのBMW735i、廃車になったフィアット、空っぽのガレージ。

「いい所に来た」

彼はニヤリと笑う。

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