蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
珍しく依頼でもあったのだろうか。

事務所内には耕介も省吾もいなかった。

留守なのにドアに施錠もしていないとは、何と無用心な探偵だろう。

「…いないのか…」

呟く夏彦。

が、考えようによってはちょうどいい。

喧しい連中が不在という事は、レポートが捗るという事だ。

夏彦は無人の探偵事務所にお邪魔して、ソファに腰掛けて早速レポート作成に取り掛かろうとする。

テーブルの上に筆記用具やら何やらを出していると。

「ん?」

ソファの隅、黒く小さな布切れが丸めておいてあるのを視界が捉える。

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