蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
探索を再開する三人。

トイレを後にして以降、完全に俊平と冴子の立場は逆転した。

恐れをなした冴子が、自分よりも小柄な俊平にピッタリと寄り添う。

俊平としては悪い気はしないが。

「この建物…一体何なのかしら?トイレがあるって事は、人が出入りするような建物なのかしら?」

必要以上にキョロキョロと周囲を見回しながら冴子が言う。

その割には窓や部屋は殆どない。

迷路のように何処までも長いコンクリート造りの廊下が続くだけ。

まるで入ってきた者を迷わせる為に作られているようだ。

「それか…」

雛罌粟が抑揚のない声で言う。

「建設途中で放棄されたから、こんな中途半端な造りになっているのか…」

「ああ、それも一理あるね」

彼女の言葉に、俊平が相槌を打った。

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