蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
そんな廃墟同然の建物から建物へ。

省吾は身を隠しながら進んでいく。

彼にとって、今回の依頼は『潜入』でしかない。

政府軍でも反政府軍でもない彼は、この戦場では異物でしかないのだ。

両軍共に敵性人物であり、出くわせば双方から銃口を向けられる可能性がある。

その為、極力ならば発見される事なく行動する必要があった。

この戦場では省吾は『空気』であり『存在しないもの』。

その存在の痕跡を残さず、姿を見られず、深く静かに潜入し、依頼だけをこなして速やかに立ち去る。

それが省吾の仕事。

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