蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
大きな音を立てて崩れ落ちる鏡。

その裏側には。

「あ…」

右半分は普通の鏡なのに、左半分には複雑な機械が隠れていた。

「種を明かせば簡単さ…この鏡の左半分はテレビ画面なのさ」

耕介が説明する。

つまり、冴子の隣に映り込んだ目を刳り貫かれた女は、ただの映像だったという事だ。

映像なのだから振り向いても誰もいない。

鏡の中にのみ女がいるように見える。

これも薄暗さを利用して、画面と鏡の区別をつきにくいようにしている。

しかも鏡をずらして設置する事で、手洗いに立った時には姿が鏡の右半分にしか映らないようにして、左半分が画面である事を気付かれないように調節してある。

大した念の入れようだ。

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