株式会社「C8」




『警視庁管轄の下、先週に相次ぎ、新たなブラック企業や犯罪組織の摘発に成功』


女性アナウンサーの怯えた表情が、何とも恨めしい。実際のところ、彼等は自分達裏社会の組織と、犯罪組織の連中を同じ枠組みとしてとらえている。

裏社会の組織と犯罪組織とは敵対関係にあり、例えるならば、飼い犬と野良犬。統率され、きちんと裏社会のルールや規律を守り、仕事以外では極普通の一般人として生活する皐月達に比べ、犯罪組織の彼等は、普段は闇の中に溶け込んでおり、何の枠組みにも縛られず、一度計画を起こせば、ところ構わず犯罪を犯す。

まあ、互いにやっている事は犯罪に違いなくとも、犯罪組織の連中は、裏社会を自分達で取り仕切ろうと、干渉や組織の排除に奮闘しているのだ。

アイアンメイデンは、彼等犯罪組織の中でもエリート集団であり、事実上、彼等の親玉…と言ったところだろう。何が恐ろしいかと言えば、以前のトップが国の総理大臣と繋がりを持っていた…と言う事。

解散したと聞いていたが、復活したとなると自分達の組織だけで手に負える問題では無い。



「…俺達も気を付けなければならないな。」


「そうですね。」


「あたし達は大丈夫よ、他が馬鹿やってんでしょ。」



浩子は鼻で笑ったが、皐月も冬真もどこか不安を抱いていた。



「今日の緊急会議だが、時間はどうする?」




『次のニュースに移ります、昨夜未明、都内のマンションに住む男性が――』




「ああ、そうね、加藤の家に行ってからだから…、何もなければ午後四時からって事で伝えておいて。」


「何もなければ…、か。自宅へ行くのに俺も同行しようか?」




『自宅で死亡していたのを、新聞の集金に訪れた男性が発見し――』




「え、冬真、何かあっても対抗出来ないじゃない。一人で行くから結構よ。」


「随分ストレートに言ってくれるな。」




『被害者の身体に銃跡があり、凶器は銃と判明。被害者の男性は、都内製薬会社に勤務していた、加藤学さん、39歳、独身で――』




「何か文句でも?」


「………いや、特には。まぁ、俺も昨日はクライアントのオペで疲れているしな。」




『室内が荒らされていた事から、強盗殺人として――』




「あ、あ、あの……二人共…。」



浩子と冬真は話を中断し、何故か顔を青くして頭を抱えている皐月を見やる。



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