株式会社「C8」
「…許せないんですっ!毎日毎日、私をコケにして。社長もあの女の言いなりだ…。」
厄介なのはその後の話。
あまりに腹が立った学は復讐を誓い、手始めに彼女の大切にしている愛車に火を付けた。もちろん動機のある学はすぐに疑いをかけられたが緻密な犯行だった為、嘘のアリバイによって疑いは晴れた。
それから脅迫状を送り付ける等をしたが、怖くなった希美は社長に頼み込み、自分にSPを付け、自宅にも万全なセキュリティを完備したようだった。
毒を盛る事も考えたが、常に誰かが側にいて手を出しにくい状況になり、学は自ら復讐することが出来なくなったという訳だ。
「八日後の二十日、都内の学会で発表する予定です…あの女が居なくなれば私の名義で発表することができるっ。」
「期限は八日…ですね。」
「お、お願いしますっ!私の全てが掛かっていますっ!手段は問いませんっ!」
ドンッと大きなスーツケースを机に叩き付け、荒い動作でそれを開く。中には札束が隙間なく並べられていた。浩子が事前に提示していた金額は三億。それがきっちりと差し出される。
八代はニヤリと笑い、浩子を見た。彼女は静かに頷く。
流石大手企業の薬剤師、高級マンションに住んでいるだけはあるようだ。此方に口を開けているスーツケースごと受け取り、書類に印鑑を押す。
「この御依頼、お受け致します。必ず八日以内に結果をご報告致しましょう。何か連絡がある場合は名刺に記された番号へお願いします。こちらからも連絡があるかもしれないので携帯は常に電源を入れておいて下さい。尚、口外は一切を禁止致します。」
「!、お願いしますっ!」
取引成立。
浩子と八代は廃ビルを後にする学を見送り、三階へと移動した。
八代はパソコンを立ち上げ、CHMやその近辺、ターゲットとなる立間希美の自宅近辺の情報を集める。
浩子は殺害計画の為の八日間の予定を立てる。
SPや自宅のセキュリティ等、厄介な事はあるが此方もプロ。三億貰ったからには完璧にこなして見せる。この日、浩子と八代は徹夜でそれぞれの作業をした。