岸栄高校演劇部〆発端
一応、話を最後まで聞いてもらい、再度部活は決めたのかと尋ねた。
「ううん、まだ決めてないの。ね、私も演劇部に入っていい?」
「おーう、入れ入れ」
「よ、よかった……これで断られてたら俺、再起不能になるとこだったっ」
「え?」
「あ……なんでもっ!」
誤魔化し笑いを浮かべ、隣で笑いを堪えているエイジの脇腹をつねる。
なあエイジ。その涙は笑いすぎたせいか?え?痛い?へえ、そうか。“笑いすぎて” 腹が痛いんだな。
決して俺がつねっているからではない。だからそんな目で見んなって。
「じゃあハルちゃんも入ったことだし、あと10人だな」
「うん、私も部員集めに協力するね。ね、エイジ…………どうしたの?」
「ぎ、ギンがつねっ「さっき転んだんだよコイツ。当たり所が悪かったんかな、まだ痛むんだって」
「ちがっ「なー? エ・イ・ジ」
お前これ以上俺を笑うんじゃねえぞ。
目だけでそう伝えれば、コクコクと縦に勢いよくエイジが顔を振ったので、ようやく解放してやった。
それをハルちゃんも微笑ましく見ていたという。
「アイテテ……まだジンジンくるぜ。
ところでギン、次だれ誘うか決めてあんのか?あと10人もいるんだろ」
「え、決めてないけど」
「はあ?! おまっ……無計画にも程があるだろ!」
「まあまあ……ギンくんも入学したてでしょ?誰を誘えばいいかなんて、早々に決まるものじゃないよ。
そうだ、今日の放課後話し合いましょう。親睦会も兼ねて、ね」
可愛らしくウィンクするハルちゃんに、俺はふたつ返事で了承。
「俺いま金欠なんだよなー」とか言ってたエイジも同じく首を縦に振った。
と、いうわけで。
俺の部員集めは、ここから佳境に入るのである。まる。