岸栄高校演劇部〆発端
でも、そんなエイジだからこそ俺もつるんでんだけどね。
エイジもエイジだけど、そいつの友人である俺もまあ物好きだな。
「あ、そうだギン。そういやお前なんで演劇部に入ろうと思ったんだよ。はっきし言ってよう、ここまでして入りたいなんて大概だぜ?」
「あら、理由も知らず早々と入部を決めたエイジもエイジでしょ。でも私も気になるわ。ギンくんはどうして入りたいと思ったの?」
興味津々にこちらを向いてくる二人。
まいったな、別に大層(特別)な理由なんてないんだけど。後頭部を掻いて目を逸らす俺は、言葉を探しつつ口を開いた。
「たいした理由なんて、これといっちゃないんだけどさ。
強(し)いていうなら、『天使』に会うため、かな」
「「天使?」」
そ、天使。苦笑して残りのジュースを飲み干し、「俺の話はおしまいな」と無理矢理話題を変えさせた。
二人は首をかしげ眉を潜めていたけど、『ホントの理由』は絶対教えない。
笑われるのがオチだもんな。
「それより部員集めだって。言っとくけど、2週間で集めらんなかったらこの話はナシだってさ」
「はあっ?!おまっ、それ先に言えよ!」
「2週間ならギリギリってとこね。間に合うといいけど……」
「だいじょぶダイジョブ。もしもの時は幽霊部員でもいいからって頼むから。とりあえず明日から頑張ろうよ」
「ほんっとお前はお気楽だなあ、ギン。お前が発端なんだしよう、もうちっと緊張感もてよなあ……」
「焦っても得なし。マイペースかつじゅんちょーにね」
てことでジュースのおかわり行ってくるわ。あ、ハルちゃんもなんかいる?
すっかりハルちゃんに緊張しなくなった俺は、演劇部設立への緊張感もどこかへポイッ。
後ろでエイジの溜め息が聞こえたような気がしたけど、俺はなーんも気にしないかんな。
焦っても得ナシ。
俺らは俺らしくいこうゼ。