岸栄高校演劇部〆発端
*
中学3年生の秋、俺は姉ちゃんに連れられ、岸栄高校をまわる羽目となった。
勿論、嫌々連れて来られたこっちの身としては至極つまらなかったし、ダチもいないこの状況で誰と楽しめというのだ。
ご機嫌斜めな俺に、姉ちゃんは何を思ったのか体育館へと俺を連れていった。
どうせここにいても面白くない。体育館のすみでジッとしていよう。
そう、思った時だった。
パチンと消える照明、前へ前へと進む人混み、いつの間にか離れていた姉ちゃんの温かい手。
混乱している内にも、俺はステージ近く、つまり人混みの最前へと来ていたのだ。
一体なんなんだ、怪訝な顔をして辺りを睨むけれど、突然としてライトが当てられる。
俺の、すぐ目の前にある、ステージの、中央へと。
そこにいたのは『天使』だった。
白いライトに当てられて、徐々に後ろのカーテンが開いていって。
演目『天使は瞳を閉じて』
俺は確かに、この天使に救われた。
同時に、心を奪われた。
「すっげ……」
気づけば言葉を漏らしているほどに、俺は、魅入っていたんだ。
きらびやかで華やかな衣装、迫力ある演技、アッと驚くような仕掛け。
「すごい」って、それだけだけど。それだけの言葉が、たった一言が、俺の語彙力皆無な頭ンなかでグルグルしてた。
中学3年生の秋、俺は姉ちゃんに連れられ、岸栄高校をまわる羽目となった。
勿論、嫌々連れて来られたこっちの身としては至極つまらなかったし、ダチもいないこの状況で誰と楽しめというのだ。
ご機嫌斜めな俺に、姉ちゃんは何を思ったのか体育館へと俺を連れていった。
どうせここにいても面白くない。体育館のすみでジッとしていよう。
そう、思った時だった。
パチンと消える照明、前へ前へと進む人混み、いつの間にか離れていた姉ちゃんの温かい手。
混乱している内にも、俺はステージ近く、つまり人混みの最前へと来ていたのだ。
一体なんなんだ、怪訝な顔をして辺りを睨むけれど、突然としてライトが当てられる。
俺の、すぐ目の前にある、ステージの、中央へと。
そこにいたのは『天使』だった。
白いライトに当てられて、徐々に後ろのカーテンが開いていって。
演目『天使は瞳を閉じて』
俺は確かに、この天使に救われた。
同時に、心を奪われた。
「すっげ……」
気づけば言葉を漏らしているほどに、俺は、魅入っていたんだ。
きらびやかで華やかな衣装、迫力ある演技、アッと驚くような仕掛け。
「すごい」って、それだけだけど。それだけの言葉が、たった一言が、俺の語彙力皆無な頭ンなかでグルグルしてた。