岸栄高校演劇部〆発端
「ふふっ、三鐘(さがね)くんって面白いのね。それに優しくて……はっきり言って、モテるでしょ?」
「そんなことないさ。ただ、霧白さんに重いモノ持たせるわけにはいかないだろう? 話し込んでしまって悪いね、僕の話、つまんなかったろ」
「あら、そんなことないわ。三鐘くんともっと話したいって思ったもの」
「ああ、君のような美しい女性にそう言ってもらえて光栄だよ」
「ふふっ、お上手ね」
だ れ だ ?
口をパッカーンと開けて二人の様子を見ていると、こちらに気づいたハルちゃんが「ギンくんっ」と言って小走りに近づいてきた。
ええ、それはとても可愛いんですがね。うしろー、後ろの方だーれー。
「おや、霧白さんのお友達かい?…………(ボソッ)チッ、なんだ男かよ…」
だから誰だよ。
つーか今、舌打ちしたよな?なあ?
口元をヒクつかせつつ、隣にやって来たハルちゃんに「こいつ誰?」と、あくまで怒りを抑え、かつ笑顔で尋ねた。
「ああ、この人はね。おなじ委員会の………」
「君は誰だい?」
テメェ遮ってんじゃねーよ!クサレ似非紳士死ねボケェ!ハルちゃんの美声聞かせろや糞があッ!
内心で思っくそ毒付き怒りで体を震わせていると、見かねたエイジがヒッッッジョーっに言いにくそうに口を開いた。
「あー……ギン、こいつが次の候補。
【三鐘 潤】(さがね じゅん)ってんだ。
で、三鐘。こいつが俺らのダチの【ギン】ってーの。あ、本名は省きで」
いや省くなよ。