岸栄高校演劇部〆発端
つーか、
「こいつが三鐘っ……?」
無理。
俺とこいつじゃゼッテー合わねえ!人選ミスだ!論外だああああッ!
内心叫びまくっていると、エイジが後頭部をぽりぽり掻きながら「こりゃマズイね」と溜め息をついた。
交渉決裂か。なにせギンがなあ……
そう呟きが耳に入り、俺は漸(ようや)く冷静になる。そうだ、そうだよ。俺の好みだけで決めるのは良くない。
話してみると結構いい奴かも……
「霧白さん、はやく教室へ行こうか。こんな男に僕は用事もないし……、なにより委員会の仕事がまだ残ってるんだ。霧白さんとの時間を邪魔されたくないしね。
君、そこ、どいてくれるかい?」
無理です。やっぱ無理です。
ムカッチーンときたよ。きちゃいましたよ。なああああっにさその態度!こうも女好きじゃあ話にもなんない!
「エイジ! 次だ次っ、次いこう!」
「え? お、おう……」
あーっ、ムシャクシャする!
鼻息荒く次のターゲットを目指す俺たち。……を、止める声がかかったのはすぐだった。
「待ってっ、ギンくん!」
その可愛らしい声に呼び止められちゃあ、止まるしかないじゃないですか!むしろ止まらん奴は男じゃない!
幾分、冷静さを取り戻して振り返り、ハルちゃんの可愛いお顔を目に収める。ああ、カワユ……じゃなくて。
「あの、あのねっ。三鐘くんはホントいい人なの。確かに男の人には冷たい態度とってしまうところもあるけど……。きっと、不器用なだけだと思うの。
だから、ね。お願い。三鐘くんに一度お願いしてみましょう?」
ズギューンッ!
そ、その『ね、お願い』での上目遣いは反則ですよハルちゃんっ。
断るに断れないじゃないか!