岸栄高校演劇部〆発端
渋々、三鐘に向き直り俺は演劇部に入らないかと申し出た。
「今のところ、俺、エイジ、ハルちゃん、ヨーコちゃんの4人なんだけど…。み、三鐘さえ良ければ入部してほしいんだ。うん。べ、別に無理にとは言わないよ?断ってくれてもいいし…。
(むしろ断れ)」
「ふうむ、なるほど。演劇部ね。…で?君はどうして演劇部に拘(こだわ)るんだい。見たところ君には程よく筋肉もついてるし、仮に運動部がイヤだとしても他に文化部があるじゃないか。
ギンくん、君の演劇部に対する思いはどこからくるんだい?」
腕を組み、俺を探るように見据える三鐘。な、なんだよコイツ……。
エイジといい、ハルちゃんといい、コイツといい。どうしてみんなそこまで知りたがるわけよ?
俺は手汗でジットリする拳をぎゅっと握りしめ、恐る恐る口を開く。
「っ……い、今は別にいいだろ。それより入部してくれるの?してくれないの?まだ他にも候補がいるんだ。早くしてくれよ」
「………。まあいい。また今度聞けばいいしな。よし、僕も入部しよう。霧白さんもいることだし、ね」
「えっ、あ、うんっ」
ぱちん、とハルちゃんにウィンクする三鐘。それに反応できない程、この時の俺はひどく動揺していたんだと思う。
その様子をエイジと三鐘が顔を見合わせ、二人して頷き俺を見つめていたことを、俺は知らない。
俺が演劇部を選んだ理由。それは勿論決まっている。
じゃあ、演劇部に拘(こだわ)っている理由は?………それは。それ、は……。
嗚呼、もう、いいじゃないか。
俺は演劇部がいいんだ。
演劇部じゃなきゃダメなんだ。
そうでもしないと、俺は……。
『シンタ、よーく見とけよ?これが、演劇なんだ。これが、うちの夢なのさ』
俺は、報われない。