岸栄高校演劇部〆発端
昔っからエイジに『腹黒い』だの『猫かぶり女』だと言われてきたけれど(失礼な!裏表なんかないわよ)、今回は少し自分でも実感した。
いやでも、利用できるものは利用しなきゃ……ねえ?
内心ふふふと黒笑いをしていると、目の前にいた美香子ちゃんがドン引いた態度で「な、なんだよ…」と怯える目を向けてきた。
「ううん、なんでもないの」にっこり笑いかければ「そうかよ…」と言って美香子ちゃんに手を離される。
「じゃ、じゃあ活動するときは言ってくれよ。うちもすぐ駆けつけるから、うん」
「本当に? ありがとうっ」
言うなり教室へと戻ってしまった美香子ちゃんの背を送り、私は密かにガッツポーズをした。
私も、部員集め頑張ろう。それがギンくんのためになるなら、例えエイジに腹黒いと言われても続ける。
「……でもいつか、ギンくんの悩みをわかってあげたいな。ううん、『あげる』んじゃなくて『したい』」
ギンくんのために……。
丁度その時、予令のチャイムが廊下に響いた。
「あっ、もう授業だわっ。早く次の準備しなくちゃ!」
慌てて教室に入る。
教室に入った途端、三鐘くんとバッチリ目が合い微笑まれたけど、私は苦笑いするしかなかった。
正直、ギンくんにはああ言ったけど、私も三鐘くんは苦手な類に入る。ちょっと、なんていうか。軽い、というか…。
い、いやっ!確かに態度は紳士的なものなんだけどっ、でもそれが女の子限定だと、やっぱり…。
それともうひとつ。
み、美香子ちゃんがすっごい睨んでる!
こ、怖いって!
別に私、三鐘くんのこと狙ってないし、三鐘くんをそういう対象として見てないのに!
……もしかしてこれは、やばめの恋愛フラグがたってるんじゃ…。
もはや内心、トホホとしか言い様がなかったのであった。まる。