岸栄高校演劇部〆発端



「お願いっ!」

「別にいいぜ」



パンッと音を鳴らして手を合わせ、頭をふかーく下げながらの切望。

は、あっさり了承された。


「うそおっ?!」


予想外の出来事に思わず確認してしまうのは、きっと人間の本能だと思う、うん。


そもそも俺、何をお願いしてるかコイツに言ったっけ?



「ダチが頭下げてまで頼んでんだぜ?もち、オッケーに決まってんだろ」



やばい、コイツ、男前すぐる。


この男前すぐる俺のダチの名前は、【麻浜 英治】(あさはま えいじ)。


ここ岸栄高校に入ってから初めてできたダチだ。もうホント、男の俺でも惚れてまうやろー!です。


あ、俺?俺は【銀貝 心太】(ぎんかい しんた)。誰だ『ところてん』って言った奴。いや確かに【心太】は『ところてん』って読むけどさ。


俺、『しんた』だから。
そこんとこ、よろしく。



「ところでよう、ギン」

「ん、どったの?」



ちなみにあだ名、『ギン』ね。おいそこまだ『ところてん』言うか。シツケェぞおい。



「俺に頼んでることってなんだ?」


「えっと、部活関係のことなんだけど……エイジってまだ部活決めてないよな?」


「おうよ。でもさすがに、科学部は勘弁してくれよ?俺のオツムが爆発しちまう!」


「ははっ、違うって。俺が誘ってんのは、『演劇部』だよ」



机の上に尻をのせ、俺より頭一つ分高いエイジに再度誘いを申し出た。



「エイジ、一緒に演劇部入んね?」

< 6 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop