岸栄高校演劇部〆発端

エイジ、お前まじサイコーだぜ。



「あ、ギン。あいつ誘えばいんじゃね?ほら、入学早々お前が『かわいー』って言ってたやつ」


「………はあっ?! な、な、ななななんでっ」



一瞬、誰だっけソレ、と首をかしげたけれど。そいつの顔がパッと頭ン中に出てきて、見る間に俺は茹でタコ状態。


そんな俺をエイジはニヤニヤして見てくるんだから、俺は顔の熱がなかなか引っ込まない。


エイジめっ……男前で惚れてまうやろと言っていた数秒前の俺を絞めたい!



「あいつ誘えばハッピースクールライフじゃねえか。ほら、そうと決まれば誘ってくるぞ」


「むむむむむ無茶だって無理だってっ!だって一回しか喋ってないんだぞっ、それも挨拶っていう会話と言えない会話!ぜってーアッチも覚えてないって!」


「覚えていようがなかろうが、これを機に仲良くなりゃいいだろ。ギーンー、行くぞー」


「断られるって絶対いいいっ!」


「安心しろ。『当たって砕けろ』って言葉、あるだろ?」



いや砕けちゃ元も子もねえよ!


イヤイヤと首を振って机にしがみつく俺に、無理矢理連れていこうと俺の足を引っ張るエイジ。


ちょっ、靴抜けるっ、靴!



「だっ、大体っ!いきなり勧誘しても印象悪くなるかもだしっ、それにエイジだって話したことないだろっ!」


「あるぜ? だって俺とあいつ、幼馴染みなんだしよう」


「へっ?」



間抜けに裏返った声を出し、ついしがみついていた机から手を離しちまった俺。


「「あ、」」


よって、漫画風にいえばドンガラガッシャーンと派手な音が教室内に響きましたとさ。

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