ワイドショー家族
「電話でたんか」
ドスのきいた声で尋ねられる。妹の目つきは、鉄が斬れそうなくらい鋭くなっている。
「……うん、ごめん」
びくびくしつつ、怒りに震えている肩越しに奥をのぞくと、お裁縫箱と紫色の特効服があった。体温が一気に下がっていく。めちゃくちゃ嫌な予感がした。
今朝のニュース。最近町を荒しまくっている暴走族が、確かオウタムだったような。
「姉貴がプライバシー侵害するような奴だったとはガッカリだぜ。信用してたのによう。落ち葉一からか。他になんか言ってたか?」
ケータイをチェックして、彼女は舌打ちした。
「バイクがバッドで潰されてるから、助けに来てくれって」
「なにぃ!?」
亜紀は加奈の襟首をつかんで、力まかせに揺さぶった。
「こうしちゃいられねぇ」
パッと手を放すと、きらびやかな刺繍の施された特効服に着替え、ドアを蹴りあける。蝶番が弾き飛んだ。大きな音をたてて倒れたドアを踏みつけ、風のように走っていく。
膝から力が抜けた。へなへなと床に座りこむ。
どうしよう、ドアが壊れちゃった。いや、そうじゃなくて。ううん、それはそうなんだけど。ダメだ、現実から目をそむけてはいけない。だけど亜紀が、あのオウタムの、しかも総長だなんて。どうしよう、両親が知ってしまったら、病で倒れてしまうかもしれない。
頭を抱えていると、父と母の部屋のドアが勢いよく開いた。
うわ。二人を下に行かせる訳にはいかない。だってすごい格好をした亜紀がいるのだから。しかし……。
「何事だ! ドアは静かに閉めろといつも言ってるだろう」
「来たわね! 水の一族」
怒鳴って顔を出した父も、呪文を唱えながら跳躍してきた母も、もっとすごい格好をしていた。